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茶畑の来訪者を迎える宿。移住者がひらいたゲストハウスで、和束のお茶を味わう。

ブロッジロッジ オーナー
ブロジェット 育子さん
和束町中地区在住。和束の好きなところは「お茶が生活に深く存在するところ」。おすすめの過ごし方は「ウォーキングまたはサイクリングの後、和束産のスイーツとお茶でほっこり」です。
ブロッジロッジ オーナー
ブロジェット 育子さん
和束町中地区在住。和束の好きなところは「お茶が生活に深く存在するところ」。おすすめの過ごし方は「ウォーキングまたはサイクリングの後、和束産のスイーツとお茶でほっこり」です。

「茶畑の景色に町役場のウェルカムな雰囲気。ビビッと来てここに決めました」。

2015年、ブロジェット育子さんは夫マイケルさんと2人の子どもの家族4人で和束町に移住してきました。翌年に農家民宿Blodge Lodge(ブロッジロッジ)をオープン。茶畑に囲まれた一軒家で、国内外からのゲストに宿泊、食事、体験アクティビティを提供しています。海外はアメリカ、ヨーロッパからのゲストが特に多く、「お茶」文化の体験を求めてやってくるそう。日本のゲストは「茶畑の景観」を見に来ることが多いと言います。

「お茶を淹れましょうか」。和束に住んで日本茶の魅力に目覚めた育子さん。茶葉が並ぶ棚からひとつ選んで「煎茶用回転式ドリッパー」にセットしてくれました。お湯を給湯サーバーに入れると、回転しながら少しずつ茶葉に注がれていきます。京都府茶業研究所と京都府茶共同組合が開発に協力したドリッパーは、誰でも煎茶をおいしく淹れるために発案されたもの。お茶の香りが部屋に広がっていきます。一面に広がる茶畑を眺めながらの一服は、身も心もリラックスさせてくれました。「茶農家さんによって香りや味わいが違います。シングルオリジンが楽しめる体験は和束ならではです」。

ブロッジロッジでは、煎茶の飲み比べ、茶葉を使った料理、抹茶アートの体験プログラムが用意されています。ゲストは煎茶摘みや茶畑ツアーに参加したり、近所を散策したり、景色を見て過ごしたり…思い思いの時間を過ごしているそうです。そして「静かで落ち着いた」「もう少しいたかった。もっとゆっくりできたと思う」と滞在に満足した感想を残しています。

育子さんは京都府木津川市出身で、アメリカや東北でも暮らしていた経験があります。ゲストハウスはマイケルさんと付き合っていたころからの2人の夢でした。いずれ実家に近い田舎でゲストハウスがしたいと考えていましたが、出産、育児、フルタイムの仕事などで一時は諦めかけたことも。けれど和束町に出会い、初めて見る茶畑に「ほかでは見たことがない」と引き込まれたそうです。「いろんな田舎を見て来ましたが、茶畑の景観はとてもめずらしかったんです」。

移住した当初は、国際カップルのため目立っていたと言います。「人口が少ないから、新しいものはどうしても目立ってしまいます。だけど一度知り合うと外国人でも関係なく、普通に受け入れてくれました」。近所の方が自然と子どもの見守りをしてくれるような人間味あふれる暮らしは、ここに来て良かったと思うに十分なものでした。ショッピングモールやドラッグストアはないけれど、車で少し走れば隣町にあります。便利な生活以上に大切な、人を惹きつけるものが和束町にはある。少しずつ増えてきた移住者が、そう証明しているようでした。

「ゲストハウスは自分のペースで運営できて、兼業や副業にもおすすめの仕事ですよ」。ご自身も子育て中のため、家族の予定に合わせ仕事を調整しながら続けられています。今後は日本茶を学びに来る人に向けた長期滞在プランも企画していると教えてくれました。

茶源郷、和束に広がる緑の茶畑。その中には人々の暮らしが息づいています。時にはゆっくり滞在し、町の人と言葉を交わしてみてはいかがでしょうか。景観を眺めるだけでは得られない、暮らしと交わる時間を過ごせるかも知れません。

PLANNING&COORDINATION
田中昇太郎
田中美代子
西田ひろ子
PHOTOGRAPHER
奥山晴日
WRITER
原田美帆